人体の多くは水分です。動脈、静脈、リンパ液、どれも人体にとっては欠かせないものです。
その中でオステオパシーでトピックにあがることが多い、でも、一般にはあまり知られる機会が少ない『脳脊髄液』について紹介します。
脳脊髄液は脳の中にある部屋で造られる液体です。この脳脊髄液の循環が滞ることで心身にその影響が派生することが考えられます。
スーパーに並んでいる豆腐パックで例えると分かりやすいかも知れません。
豆腐が脳、豆腐を入れてるパックが髄膜(頭蓋骨に張り付いている膜)、そしてパックの中で豆腐を浸している水にあたるのが脳脊髄液です。
豆腐パックに水が入ってないと豆腐が型くずれしてしまい、そして水分を失った豆腐は鮮度が落ちてしまいます。
脳も頭蓋骨の中で、この脳脊髄液に浸されていますので豆腐パックと同じ視点で考えたときに、その重要性がわかると思います。
生体には欠かすことができない液体
脳脊髄液は頭から脊髄を介して骨盤まで循環しています。1日にペットボトル1本分(500ml)産出され、その殆どすべてが吸収されます。
産出された脳脊髄液は最終的に静脈系に吸収・排出されることから広義に全身に脳脊髄液が行き渡っているとも言えます。
オステオパシーの創始者Still博士は、「人体で最も高い既知の元素を持つ」とこの脳脊髄液のことを述べていました。
オステオパシーでは、この脳脊髄液の原理を用いた手法も数多く存在しています。そして実際にこの原理を用いて臨床で効果をあげている症例も多数報告されています。
科学的な観点。脳脊髄液の研究から分かったこと
オステオパシーの世界だけに限らず、科学の分野でも、この脳脊髄液について研究が行われています。
その中でも比較的新しい研究を紹介します。
脳脊髄液の循環を促すことで脊椎側弯症の治療や予防に繋がるのでは?という内容です。
概要をざっくりとまとめると、、
・突然変異した魚を調べてみたところ湾曲した脊柱および水頭症として知られる脳腫脹を呈していた
・突然変異した魚は脳の表面に通常見られる運動性絨毛、そして脊髄の裏打ちが正常ではなかった。また、脳脊髄液の流れがほとんどなかった
・絨毛を生成する細胞に正常な遺伝子機能を特異的に回復させたところ脊椎側弯症は起こらなかった
・人の発達段階にあたる時期に魚を水温の高い水槽に移動させたところ運動性絨毛の機能低下がみられた
・正常な繊毛の機能および脳脊髄液の流れを促進することが側弯症の治療または予防に繋がるのではないか
というものです。
研究対象が人ではなく魚であること。また、環境因子も関係しているようなので単純に人体に適応できる訳ではないと思います。
しかしながら、臨床とリンクすることもあり、興味深く示唆に富む研究でした。
オステオパシーの科学・非科学
先に記したようにオステオパシーでは140年以上の歴史の中で、この脳脊髄液の原理を利用した手法が後進に伝えられてきています。
また、からだの機能が低下することによって構造面にもその影響を及ぼすことはオステオパシーの原理原則でも定義されています。
先人の着眼点、深い洞察、すべてにおいて驚くことばかりです。
純粋に科学が追いついていない「非科学的」な事象は数限りなくあります。そうしたものが、このように自然な形として知的な研究者に託され研究が進められていくことが医学の更なる発展に繋がっていくのではないでしょうか。
今後、更に研究が進み、臨床応用される日が来ることを期待して待ちたいと思います。
参照.
Scoliosis Traced to Problems in Spinal Fluid Flow
病気がみえる vol7 脳・神経
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